箴言(しんげん)とは
「なあ、ひよこ」
「なあに?」
「ドラえもんているだろ」
「ああ、あの短足猫型ロボットだね」
「そうそう。あいつ足が短いくせして、実は正座ができるんだよにゃ」
「いやいや、それは無理でしょ」
「それがマジにゃんだよ。ほら、証拠写真も手に入れたにゃ」
【証拠写真】
「・・・なんかこのドラえもん、驚いた表情をしてるけどさ、この現実を見せられたウチらの方が驚きだよね」
「だろ! 俺もびっくりしたにゃ」
「まあ世の中は不思議なことに満ちているからね。満ちて、満ちて、満ち溢れているからね」
「あ、そうそう、ところで、ひよこ。お前『箴言(しんげん)』て言葉知ってるか?」
「うん、知ってるよ」
「どんな意味にゃんだ? 俺の予想では『信仰心の強いゲンさん、ヤバくない?』の略かなーと思ってんだけど」
「は? なに言ってんの? 信仰心て何? ゲンさんて『大工の源さん』のこと言ってんの?」
「違う違う、信者の源さんだよ」
「は!? 信者の源さん!? なんか危険な香りがプンプンする肩書きなんだけど!」
「そうにゃんだよ。ある日、ゲンさんは怪しいカルト教団に入っちまってさ。もうまさに『しんげん』て感じだよにゃ。あ、そうか、わかった! 『しんげん』て信者の源さんの略だったのか!」
「いやいや、全然違うって」
「え、違うの? じゃあ『箴言』てどういう意味にゃん?」
「箴言ていうのはね、戒めの言葉とか、教訓の意味を持つ短い言葉のことを言うんだよ。つまり格言のことだね」
「ほう、格言ねえ。じゃあ『失敗は成功の味の素』みたいな言葉のことを言うのか」
「そうだね。でも、それを言うなら、『失敗は成功のもと』だけどね」
「でもよ、箴言なんて言葉、どうやって使うんだ?」
「うーん、例えばねえ・・・、誰かの話を聞いた時に、『ずいぶん箴言めいたことを言うね〜』とか、『どんな箴言よりも心に突き刺さったよ』とか、そんな使い方をするんじゃないかな」
「にゃるほど、そうやって使うのか。だけど普段はあまり使うチャンスがなさそうだにゃ」
「だろうね。小説とかなら出てきそうだけど」
「まあ、とにかく、信者の源さんの略じゃないってことがわかって良かったにゃ」
「どんなゲンさんなのか、ちょっと見てみたいけどね(笑)」
「おっと、もうこんな時間か。じゃあ俺はそろそろ行くにゃ」
「誰かと待ち合わせでもしてるの?」
「俺には成し遂げなきゃならないことがあるにゃ。だから今から行ってくる。じゃあにゃ!」
「ふーん・・・。ウチも帰ーえろっと」