忖度(そんたく)とは
「なあ、ひつじ」
「なあに?」
「お前さ、『忖度』って言葉知ってるか?」
「忖度・・・? ああ、あれね、忖度ね」
「お、知ってるみたいだにゃ。教えてくれよ、どんな意味にゃんだ?」
「えーと・・・、そうそう、忖度ってのは、中国の春秋戦国時代に出てくる戦国武将の名前アル」
「戦国武将!? え、忖度って、人の名前だったの!?」
「そうアル。20万人を率いる大将軍だったネ」
「へぇ〜、そりゃスゴイにゃあ、って、絶対違うだろ! 俺の読んでる本には『気持ちを忖度するように』って書いてあったけど、これ絶対、戦国武将は関係ねーだろ!」
「忖度大将軍のような強い気持ちを持つように、って意味なんじゃないアルか?」
「本当かよ!? 怪しいにゃあ・・・。まあ、とりあえず、ひよこに聞いてみようぜ!」
「そうアルな」
◼︎『忖度』の意味とは?
「いやいや、戦国武将の名前なんかじゃないんだよ! だいたいなんなの、忖度大将軍て。てゆーか、バカなの?」
「ほら、大将軍じゃねーってさ」
「じゃあ、ひよこ。お前は『忖度』のなにを知っていると言うアルか?」
「意味とか、その使い方とかだね」
「ほほう。じゃあ、聞かせてもらおうか、その意味とやらを」
「うん。えーと、忖度ってのは、他人の気持ちをおしはかること、推察すること、っていう意味なんだよね」
「おしはかる? 推察? んー、ちょっとわかりにくいにゃ」
「んー、つまりね、すでにわかっている物事を基準に、他人の気持ちを想像するってこと」
「想像?」
「うん。例えば、家に泥棒が入ったとして、なぜか中学の卒業アルバムだけが盗まれていたとする。で、この事実をもとに、なぜ犯人は中学の卒業アルバムだけを盗んだのか? 中学の卒業アルバムがどうしても必要な理由があったのか? それとも、この家に卒業アルバムがあったらマズい事情でもあったのか? みたいな感じで、犯人の気持ちを想像するってこと」
「にゃっは〜、まるで推理みたいだにゃ」
「まあ、そーいう側面もあるかな。でもね、単純に他人の気持ちを想像するって意味だけじゃなくて、想像した上で相手を思いやったり、気を利かせた行動をとる、って意味でもあるんだね」
「ほう」
「例えば、目の不自由な人を駅のホームで見かけたとして、『きっと目的の電車に乗るのも一苦労だろうな〜』と思ったとするでしょ。で、『じゃあ自分が誘導してあげれば、少しは助けになるかも』って考えて、『あのー、どこまで行かれるんですか? よかったら誘導しますよ』と声をかける」
「つまり、その一連の流れが『忖度』ってわけだにゃ?」
「そーゆうこと! まあ、わりと広い意味で使われる言葉なんだよね」
「で? どうやって使えばいいネ」
「んー、例えば・・・、『お前さ、あいつのこと忖度しすぎだろ!』とか、『自己中なあいつが他人を忖度するなんて、ビックリだよね!』みたいな感じかな」
「ふーん、普段の会話じゃ、あまり使わなそうだにゃあ」
「そうだね。小説とか、新聞や雑誌の記事とか、文章で使われることの方が多いんじゃないかな」
「にゃるほど。いやー、勉強になったにゃ」
「そりゃよかった。じゃあ、ウチは用があるからもう行くね」
「用?」
「うん。今日はね、『焼き鳥パーティー』に呼ばれてるんだ〜! あー、楽しみ! もう今からワクワクが止まらないよ! ま、そーいうわけだから、バイバーイ」
「いや、ワクワクしてる場合じゃにゃいって! それはおそらく、お前が焼き鳥にされるためのパーティーだぞ! お前の人生に終止符が打たれるためのパーティーだぞ!」
【忖度】そんたく
・他人の気持ちをおしはかること
・他人の気持ちを思いやること
・相手がどんな気持ちなのかを察すること
・相手の言動の裏にある本音を察すること
・既にわかっている物事を基準に、相手の気持ちを想像すること
・気を利かせること
〈使い方〉
・彼女の心中を忖度する
・彼の判断を忖度した結果
・彼は誰よりも他人の心を忖度できる人間だ
・あれこれ忖度してもしょうがない
・私は見知らぬ人から忖度を受けたことがある